オーナーのための有償SO、ベンチャーのためのSO信託

2019.10.24 - written by takahashi

第一回のメンバー紹介


パネラー(Panelist)

大隅 隆史
Takafumi Osumi
PEファンド出身


明治通りパートナーズ 取締役 M&A統括責任者
明治通り会計社 マネージングディレクター

(略歴)
大手上場企業にて経営企画等に従事した後、大手評価会社にて株価算定や新株予約権評価、M&Aアドバイザリー業務等に従事。その後、老舗PEファンドにてバイアウト投資、ハンズオン支援等を多数実行。

(紹介)
中途半端な仕事は大嫌い。勉強になりましたでは意味がない。会計オンリーだった弊社にファイナンスの新しい風を吹き込んだ、結果にこだわる熱血漢。

廣野 昂
Ko Hirono
公認会計士


株式会社明治通り会計社 マネージャー

(略歴)
大手監査法人にて上場企業、上場準備企業の監査を多数経験。その後明治通り会計社にてIPOコンサルティング、株価算定、オプション算定等多数経験。

(紹介)
元バンドマンかつ元バーテン。その男気から後輩達から慕われる存在。好きな言葉はフォルテッシモ、嫌いな言葉はピアニッシモ。

ファシリテーター(Facilitator)

高橋 克幸
Katsuyuki Takahashi
公認会計士・税理士


株式会社明治通り会計社 取締役
株式会社明治通りパートナーズ 取締役
明治通り税理士法人 代表社員 


(略歴)
とある監査法人IPO事業部退職後、2007年に別の監査法人を設立、2008年にFAS事業と会計コンサル事業を行う明治通り会計社を設立、2009年に明治通り税理士法人を設立、2019年にM&AのFA事業を行う明治通りパートナーズを設立。

(紹介)
弊社代表阿部ととともに明治通りグループを設立して早や10年。マスターオブライフになることを目指しているが、それが何か未だにわかっていない。


はじめに

 

 こんにちは!明治通り会計社の髙橋です。
 今月から、月に一回「明治通りジャーナル」と称して、財務会計に関する情報を私がファシリテーターを務める座談会形式で配信していきたいと思います。
 テーマは、ストックオプションやM&A、IPO等、財務会計の様々な分野にわたるため、毎回弊社の異なるメンバーを呼んでお送りしたいと思います。
 第一回の今回は「オーナーのための有償SOと、ベンチャーのためのSO信託」として、有償SOと有償SO信託の特徴についてまとめていきたいと思います。
 パネラーは、弊社マネージングディレクターの大隅とマネージャーの廣野です。



SO(ストックオプション)の種類とメリット、デメリット


高橋
高橋

大隅さん、廣野さん、よろしくお願いいたします。
弊社メンバーも通常業務もありますが、月に一回ですね、財務会計に関するトピックについて、各担当者に出てきてもらって、 侃々諤々議論していきたいと思います。

廣野
廣野

承知いたしました。月に一回ですよね?

月に一回もですか

大隅
大隅

高橋
高橋

月一くらい簡単ですよね?




のっけからやや暗雲垂れ込める弊社会議室



高橋
高橋

本日のテーマはまず有償ストック・オプション(以下、有償SO)です。一般的なSOは役職員が無償で取得するのに対して、有償SOは文字通りお金を払って取得するSOですが、改めてこのメリットは何でしょう?


一番のメリットは税金ですね。原則的なSOは行使時に課税されますが、有償SOは違います。行使して株式を売却するまで課税されません。SOの発行条件を工夫することで税務上のメリットを得ることが可能なんです。

大隅
大隅


廣野
廣野

ですね。まず、原則通りSOを発行した場合、例えば行使価格100円のSOを付与され株価1,000円の時に行使したら、行使した期に900円分課税されちゃうんですよね。株を売っていないのにですよ!


しかも給与所得だからね。所得水準によっては未実現のキャピタルゲインの半分以上(注:所得税・住民税を合わせて最大で55%)を税金で持っていかれるわけです。これってかなり痛い話ですよね。

大隅
大隅







廣野
廣野

ところがSOの発行条件を工夫すれば、税制優遇を適用できます。


高橋
高橋

税制優遇が適用される、いわゆる税制適格SOのことですよね。



廣野
廣野

そうですね。SOを税務上で分けると、税制優遇される適格SOと優遇されない原則的なSOである非適格SOの2種類があります。
その他全く別物なんですけど、適格SOと同じ課税関係となる本日のテーマである有償SOがあるんです。





高橋
高橋

つまり、SOには適格SOと非適格SOと有償SOがあるんですね。


ですね。SOと一口に言ってもその性質は全く異なり、適格SOと非適格SOは報酬の一環として付与されますが、有償SOは単なる有価証券の売買と考えると分かりやすいかと思います。

大隅
大隅


廣野
廣野

税務上は一定の条件を満たさないSO、つまり原則的なSOは税制非適格SOで、先ほどの話の通り行使時に課税されます。
一方、適格SOと有償SOは、株式の売却時まで課税されません。
行使して株を売ってキャピタルゲインを得てから、税金を払います。
非適格SOと比べて納税の時期も金額も全く違うんですよね。



興が乗ったのか、ろくろを回しだす廣野氏



課税のタイミングだけではなく、所得区分も変わるしね。
非適格SOは給与所得になるからキャピタルゲインの半分以上が税金で持っていかれる可能性があるけど、適格SOと有償SOなら、所得区分が譲渡所得だから約20%の税率で済むよね。

大隅
大隅


高橋
高橋

なるほど。税金を考えると適格SOか、有償SOが断然有利ということですね。


ですねー。

大隅
大隅




こちらはノッてきてラッパーのようになる大隅氏



オーナー企業のかゆいところに届く有償SO

高橋
高橋

SOの種類や課税メリットは分かったのですが、適格SOと有償SOであれば、適格は無償発行なんですよね。であれば、適格SOこそ付与される方にとっては最も有利なSOということになるんでしょうか。


廣野
廣野

そうとも言えます。ただ、適格SOというのは付与対象者が役職員等に限定されたり、権利行使価額の年間行使額が1,200万に限定されていたりと、条件がすごく厳格なんですよ。


表1【税制適格ストック・オプションの主な要件】


・無償で発行されたものに限る
・権利行使価額は、ストック・オプション付与契約時の株式時価以上
・譲渡禁止規定が付されている
・新株予約権付与決議時に大口株主(※)及び大口株主の親族等に該当しない
 ※大口株主とは・・・
  上場会社:発行済株式の1/10超を保有
  非上場会社:発行済株式の1/3超を保有
・権利行使金額の年間合計額が、1,200万円を超えない
・行使期間は、付与決議日後2年~10年までの間
・付与対象者は、会社及びその子会社の取締役・使用人・執行役・一定の要件を満たした外部協力者
 子会社:直接・間接的に議決権のある発行済株式または出資の50%超を所有されている会社


適格SOは、非上場企業では持分比率が1/3以下の役職員等に限定されていたり、年間行使額が1,200万円までに制限されていたりと、オーナー経営者にとっては使いにくいんですよね。
一方で、有償SOであればそういった制限はありませんし、外部者に付与しても適格SOと同様の課税関係で済みます。

大隅
大隅







高橋
高橋

なるほど。オーナー経営者にとったら適格SOより有償SOの優秀さが際立つようですが、忘れてはいけないのが有償ということですね。付与される人はお金を払わなければいけないわけですよね。


廣野
廣野

確かに有償SOは適格SOと違って、付与時にお金を払う必要がありますが、通常は多額の払込金額になることはありません。
あくまでイメージですが、一定条件を設定することで、株価の数%程度の払込金額にすることが多いです。


ですね。
条件設定としては、“一定の業績を達成すれば行使できる”といった業績条件と、”一定の株価を下回ったら行使できない“といった株価条件が一般的ですね。
これにより払込金額を下げられるわけですが、この有償SOの公正価値評価が正しくないと税務や法務のリスクが発生するため留意が必要です。

大隅
大隅



廣野
廣野

あと、多少の金銭負担があった方がインセンティブ・プランとして機能する場合もあるので、必ずしも有償が悪いとは限りませんね。タダで手に入ったものは無駄にしても損はないと考えるのが人間の心理ですし。



だね。もちろん付与対象者の懐事情を考慮する必要がありますが、多少の金銭負担をお願いすることに意味はあると思います。
それにお金は発行会社に払い込まれますので、発行会社にとっては事業資金として活用できるとも言えます。

大隅
大隅





高橋
高橋

なるほど。
有償SOは
①付与対象者がやる気になる行使条件
②負担にならない払込金額
③有償SOの正しい評価
に留意する必要があるということですね。



ですね。その三点に留意すれば有償SOは上場準備中のオーナー企業には非常に有効だよね!

大隅
大隅


廣野
廣野

ですね!オーナー企業の社長は、当然持分が高いので税制適格要件のうち、大口株主要件(前記の表1※参照)に引っかかってしまい、税制適格SOが使えないケースも多々ありますし。





だねー。その点、有償SOでは大口株主要件 (前記の表1※参照) がないからこの点からもオーナーは使い勝手良いよね。

大隅
大隅


廣野
廣野

ですね。誤解を恐れずに言うと、有償SOは、上場前に有償SOという名の株を買って、上場後に売るだけというイメージですしね。課税のタイミングも課税区分も株の売却と同じなんですよね。


…だいぶ誤解を恐れず言ったな。笑
あと役職員に有償SOを付与するメリットとして、会社が目標としている業績水準などが伝わるので、目指すべき方向が浸透して会社に一体感が生まれるということも言えますね。

大隅
大隅



たまたま真剣白刃取りのような体になる大隅氏と廣野氏



ベンチャー企業の強い味方、有償SO信託

高橋
高橋

お二人ともありがとうございます。ここまでオーナー企業における有償SOの有効性について話してきました。SOについてほかに耳よりな情報はないのでしょうか。


廣野
廣野

耳より情報ですか?



有償SO信託というものがありますよ!
通常の有償SOは、当たり前ですが役職員などに直接付与しますよね。
他方、有償SO信託はいったん信託に割り当てて、有償SOを信託にプールしておきます。
そして、将来信託から役職員などに付与する流れなんですね。
これ、未上場のベンチャー企業等にとっては非常に使い勝手がいいんです!

大隅
大隅



なんかテンション高い。踊る気か?



廣野
廣野

ですね。いったん信託にプールすることで、誰に付与するかを後から決められるので、後から入社してきた人にも付与できますし、将来の貢献度に応じて付与数を後から決定できるメリットもありますよね。


だねー!今までの有償SOだったら、新しく入社した人に付与したい時とか、貢献度が高いからもっと付与したい場合に新たに有償SOを発行していたんだけど、成長企業だと株価がどんどん上がっていくから、新たに有償SOを発行すると行使価額が上がってしまうんだよね。これ、結構悩ましいんだよね!

大隅
大隅



大隅さん、テンションたけえな。踊る気か?




廣野
廣野

ですね!その点、有償SO信託であれば、株価が低い時に発行した有償SOを信託にプールしておくので、将来付与する時にも行使価額が低い有償SOを割り当てることができます。これが最大のメリットですね。


だね。貢献に応じて付与する数をガイドラインにまとめることで、役職員のモチベーションアップにもつながるしね。

大隅
大隅


廣野
廣野

ですね。信託にプールしておいた行使価額の低いSOを与えることができるので、人材採用のアピールにもなりますもんね。


多額の給与を払えないベンチャー企業にとっては、有償SO信託を人材採用のアピールに使えるのは大きなメリットだよね!

大隅
大隅



踊らねえよ!



高橋
高橋

なるほど。有償SO信託、ベンチャー企業においては使い勝手良さそうですね。



これから成長していく未上場企業が、優秀な人材を採用する際にはかなり役に立つんじゃないかなと思います。スタートアップ企業とか。

大隅
大隅


高橋
高橋

お二人とも、ありがとうございます。今回は、有償SOに合わせて、有償SO信託について話すことができました。
オーナー企業に有効な有償SO、ベンチャー企業に有効な有償SO信託、せっかくコストや時間をかけて発行するのですから、会社の目的に合った設計を行えるように慎重に検討したいですね



ですね!

廣野
廣野

ですね!

大隅
大隅



まとめ

高橋
高橋

第一回明治通りジャーナル、いかがでしたか。最後に今回のおさらいとして簡単な表を作りました。ご確認いただければ幸いです。
ではでは次回もよろしくお願いいたします。

表2【各SOの特徴等】



最後までお読みいただいてありがとうございました!!

文:髙橋克幸(明治通り会計社)
編集:髙橋克幸、中垣聖也(明治通り会計社)
撮影:丸木章道(明治通り会計社)



takahashi
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